『クイズ$マジオネア〜むつみ祭り応援スペシャル』

 木村匡也(きょうや)のナレーションが響く。

《これまで数多くのどれみキャラの秘密を容赦なく暴いてきた『クイズ$マジオネア』。そして今夜、おかもんたの前には何と、家族と一緒に遂にあの美空小最強の女子が!》

『電波少年』、『爆笑大問題』等で有名な、バラエティ番組では引く手数多の名物ナレーションだ。少なくともどれみファンに、知名度があるとは思えないが。

《その、圧倒的な実力でクラスから恐れられている挑戦者が、身内だけに見せる素顔とは!? まさかの衝撃告白に、さすがのプリティむつみも涙する、『クイズ$マジオネア〜むつみ祭り応援スペシャル』。Now On Air!!》




 背は、低かった。

 少なくとも、元ネタのあの人よりは。

「あなたの人生を変えてしまうかもしれない、『クイズ$マジオネア』」

「違う違う。それ『だっふんだ』やし」

 いつもの決まり文句を終えて、何故か唇を突き出す志村けん風の「顔オチ」まで披露したその男――「おかもんた」に、あいこはこれで何度目かもわからないツッコミを入れた。

 グレーのズラ。スーツ。そして何より、異常に、顔がテカっていた。茶色の靴墨を塗りたくったのだろう、首周りは普通の肌が露出しているあたりでバレバレである。

 果たして、彼は何者なのか。いつだったか――ある日突然、彼はフジテレビ、違った美空町に現れた。

 彼は言う。とあるCDドラマで、『オヤジーデのクイズミリオネア』というそのまんまな企画がオンエアされていたから、ここに現れたのだと。

 前回は――そう。ゆき先生が"回答者"だった。折りしもその時は、卒業式直前。ゆき先生の正体が明かされた直後。

 大衆の面前で、その秘密が――正体が暴かれるのか? 戸惑い焦るどれみたちの前で、おかもんたは容赦なく、ゆき先生の秘密を暴いた。

STUDY!

ゆき先生
は彼氏がいないから、関先生を巻き込んで、毎晩屋台で呑んだくれている。

 と。

 そういうものらしい。

 ゆき先生は語った。「私は彼氏ネタでしか笑いが取れないのか」と。

 そうかもしれない。

「それでは始めて参りましょう。早押し並べ替えクイズ」

 いつの間に出来たのか。「FM MISORA」のスタジオに特設されたそのセットの中で、また『クイズ$マジオネア』が始まる。FM美空はラジオ局なのだが、まぁ細かいことはどうでもいい。

「次のクラスメートを、初登場が早い順に並べなさい」

次のクラスメートを初登場が早い順に並べなさい
A:奥山なおみ B:木根ひろこ
C:伊集院さちこ ・D:梅野ゆかり

「奥山なおみ。木根ひろこ。伊集院さちこ。梅野ゆかり」

 問題を読み上げるおかもんた。シンキングタイム、開始である。

「……ええと、ゆかりちゃんは6年生の時の父の日に出たんだっけ?」

「どれみちゃん、『初登場』よ。主役回じゃなくて、初めて喋った回、って考えればいいのかも」

「というか、このクイズっていっつも意味ないんやけどな」

「仕方ないじゃない。ここしか楽しむ場所なんてないし」

「奥山さんは、私が出る前からいたから――」

「えーっと、さっちゃんでしょー? 玉木ちゃんにー」

「…………たりぃ」

「既に選択肢にねぇよ、巻機山」

「……最後のほう、私ほとんど出てなかったしなぁ……」

「私なんて、4年間で一話しか喋ってないし……」

 シンキングタイム終了。回答者席の10名が、回答を終わった。

「さぁそれでは正解見てみましょう」

次のクラスメートを
初登場が早い順に
並べなさい
A:奥山なおみ

「奥山なおみ――」

次のクラスメートを
初登場が早い順に
並べなさい
A:奥山なおみ
D:梅野ゆかり

「梅野ゆかり――」

次のクラスメートを
初登場が早い順に
並べなさい
A:奥山なおみ
D:梅野ゆかり
C:伊集院さちこ

「伊集院さちこ――」

次のクラスメートを
初登場が早い順に
並べなさい
A:奥山なおみ
D:梅野ゆかり
C:伊集院さちこ
B:木根ひろこ

「木根ひろこ――」

 正解が出揃った。

POINT!

奥山なおみ:『無印』14話に登場。
木根ひろこ:『ドッカ〜ン!』36話に登場。
伊集院さちこ:『ドッカ〜ン!』32話に登場。
梅野ゆかり:主役回は『ドッカ〜ン!』19話だが、
登場自体は『も〜っと!』10話の時点で果たしている。

 そして。

「この中で、一番幸運な人は!」

・春風どれみ           8.94
・藤原はづき           7.71
・妹尾あいこ           14.10
・瀬川おんぷ           9.77
・飛鳥ももこ           7.99
・巻機山花
・矢田まさる
・長谷部たけし          9.36
・奥山なおみ           9.89
・伊集院さちこ          7.88

「おめでとうー!!」

 叫ぶおかもんた。会場から沸き起こる拍手。思わず会釈するはづき。だが、その表情は複雑だ。

 何故なら。

「補欠ルーム!!」

「やっぱりかい」

 何事もなかったかのように叫ぶおかもんたと、一応ツッコむあいこ。

 そう。この早押し並べ替えクイズと、回答者は全く一致していないのだ。

 中継がつながる。

「さぁ今回はスペシャルなんで、中嶋APが直々に迎えに行っております!」

「知らんちゅうねん」

 おかもんたのあおり(と、あいこのツッコミ)の背後で、ざわめく観客の声が響いた。どっから連れてきた観客なのか疑問だが、まぁそれは置いておく。

 中継のカメラが写した文字は――「ジュニアレスリング教室」。

《今夜最初に、補欠ルームを抜けたのは!》

 再び、木村匡也のクセのあるナレーションが、どこからか聞こえ始めた。

 モニターの全面に映し出されたその顔に、観客の歓声が一気に大きくなった。

補欠1位?
工藤むつみ

《工藤むつみーー!! いよいよ、史上最強の挑戦者が、マジオネアの舞台に!》



〜CM〜



《今夜最初の挑戦者は、プロレス少女工藤むつみ! レスリング以外でも、『ドッカ〜ン!』13話で大活躍の美空小最強の女子≠ェ、今多くの謎を抱えて、チャレンジングシートへ!》

TODAY'S CHALLENGER DATA 美空在住
ジュニアプロレスラー
工藤むつみ ・無印時代から活躍する美空小
 屈指の人気女子クラスメート。
美空小最強の女子≠ニして
 多数の男子からも恐れられて
 いるが、その私生活は一切謎。

「どうぞこちらへ!」

 おかもんたの呼びかけに、ちょっと照れながら挑戦者が――むつみが入場した。割れんばかりの大歓声の中。

工藤むつみ  小学生
Age:12 MISORA

「ラッキーラッキーラッキーラッキー!」

『ラッキーラッキーラッキーラッキー!』

「ラッキーラッキーラッキーラッキー!」

『ラッキーラッキーラッキーラッキー!』

「ラッキーラッキーラッキーラッキー!」

『ラッキーラッキーラッキーラッキー!』


 手拍子と共に、おかもんたが掛け声を上げる。観客も、併せてついてきた。

「そ、そんなテレちゃう……」

 拍手が巻き起こる最高潮のスタジオだったが、むつみのテンションはまだ対応しきれていない。無理もないが。

「……あの、それで、全然意味わかってないんですけど……」

 だがそれを無視して、おかもんたは。

「いーち! にーぃ! さぁーん!」

「――ダーーーーーッ!!!!」

ダーーーーーッ!!!!

「ノリノリじゃねぇか」

 思わずつられたむつみに、長谷部がツッコんだ。



「だいじょぶなんですか、これ?」

「だいじょぶです」

「そう、このセットって、こういう風になってるんだ……」

「そうです」

《早速、何も知らない挑戦者に試練が!》

「さぁむつみさん! 今日は応援の方は、来てらっしゃいますか? 誰か」

 軽く、おかもんたと談笑していたむつみの言葉が詰まった。

「………………えぇ?」

「あ、いました! 応援の方、来てるじゃないですか!」

 むつみの背後。観客の一人に手をかざすおかもんた。そこにスポットライトが当たると。

………………

 むつみが大きくズッコケた。

「あららららら、あれ?」

「………………兄ぃ」

 その様子に気づいたおかもんた。そしてか細くむつみがつぶやく。吐く息に混じって、ほとんど聞き取れなかったが、言わんとすることは大体わかる。

「あれあれあれ? むつみさんの応援、誰ですか?」


「――ちょ、ちょっと待ってくださいね。あのねぇ――」

《果たしてこのプロレスラーの格好をした男性の正体は!》

「ナンダコノヤロー」

むつみの兄(本名不明)
SUPPORTER

「……春一番さんです」

「ああ、芸人の」

「チガウゾコノヤロー」

《今夜はスペシャルなので、むつみさんの小さい頃からのスパークリングの相手のお兄さんが応援!》

「…………むっちゃんのお兄さん、受験終わったのかな」

「らしいぞ」

 そんな番組の進行をよそに、ちょっと事情を知るどれみと長谷部が言葉を交わした。



「むつみちゃん、手が震えてるよ……」

 思わず、なおみがつぶやいた。

 むつみは、今も緊張している。回答席に常備されているグラスの水に、何度も手をつけていた。

 気を遣って、否、イジり倒すため、おかもんたが話を振る。

「いや、でもむつみさんあの、単純にクイズに答えるだけですよ?」

「……そうなんですか」

「違う違う絶対違うから」

 簡単にうなずくむつみ。無駄だとわかってもツッコんでしまうあいこ。

「いや〜でもむつみさん、お兄さんお強そうじゃないですか?」

「そうですか? ありがとうございます」

「色んな意味で、よかったですね」

「ウルサイゾコノヤロー」

 おかもんたは、「似なくて」よかったと言いたいらしい。



「それでは、始めて行きましょう。クイズ$マジオネア」

《家族の前で、むっちゃんの挑戦が始まる!》

ある大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?

「ある超大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?」

ある大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?
A:『キン肉マン』

「『キン肉マン』――」

「ももちゃんに借りました」

ある大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?
A:キン肉マン B:ファンシー雑貨作り

「ファンシー雑貨作り――

「どれみちゃんに教えてもらいました」

ある超大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?
A:キン肉マン B:ファンシー雑貨作り
C:奥山さん

「奥山さん――

「……それははづきちゃんじゃ――」

「キャーキャーキャーキャーキャー!! 違うのそれは――」

ある大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?
A:キン肉マン B:ファンシー雑貨作り
C:奥山さん D:筋肉

「筋肉――

 ブッ。

 思わず、むつみは吹き出した。会場も、一気に騒然となる。

「さぁ、むっちゃん! むっちゃん!」

「…………はい」

「これはまだ、ある『超大物クラスメート』です!」

「バレバレやっちゅうねん……」

「しかも、『まだ』なんだ――」

 頭を抱えつつ、かろうじてあいこがつぶやく。そして、どれみすらも。

「伊集院さんなんか、こういうの――」

 おかもんたが話を振ると、さちこはスラスラと言い始めた。

「はい。私は『おジャ魔女ドッカ〜ン!CDくらぶ キャラクター・ヴォーカルコレクなんとか』というアルバムで」

「言うてるがな」

 どうしても。あいこには、ツッコミを止める術がないらしい。

「私は正解はこの人かな、という『大物クラスメート』が浮かんでるんですけど」

「ああ、浮かんでますか。言わないでくださいよ!」

「はい、名前はもちろん――」

「言わないでくださいよ!」

「その人が同じアルバムで、キャンディ伊藤という元女子プロレスラーのシングルである『深爪ファイター〜キャンディ伊藤のテーマ』の曲を唄ってるんですが、その歌詞を一部改変して唄ってるんです」

「…

 うつむき、黙り込むむつみ。おかもんたは続けて、応援席に尋ねた。

「お兄さんはこれ、何となくはわかってきてますか?」

「ワカルゾコノヤロー」

「何となくわかってきてる! 言ったらダメですよ!」

「ワカッタゾコノヤロー」

「お兄さんはわかってるんですって! むっちゃんはどうかなー?」

「………………これは、私にとっては難しいです……」

 か細く、むつみはつぶやく。表情は見えないが、類推は誰にでも出来た。

 が。心を決めて。

「……その、『超大物クラスメート』が、最近そういうことを気にし出したというのを、ちょこっと長谷部くんに聞いたことがあるんです……」

「俺かよ」

 おかもんたは大きくうなずいた。

「ああなるほど。答えてください」

「はい! 答えは、『D』です!」

ある超大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことは、Dの――?

「きんにくです……」

「ファイナルアンサー!?」

「ファ、ファ――」

「頑張れー、むつみちゃーん!」

 無責任なハナの応援が聞こえた。

「お兄さん、『頑張って』って言ってあげてください」

「ガンバレコノヤロー」

「ファイナルアンサー!!」

 おかもんた、そしてむつみ兄が追い討ちをかける。思わずむつみは無視して叫んだ。

ある大物クラスメートが、最近もっとも興味を持ったことはどれ?
・A:キン肉マン B:ファンシー雑貨作り
C:奥山さん ・D:筋肉

「…………………………………………………………………………………………………………………………………
正解おめでとう!」

・¥10・

 会場から拍手が巻き起こる。

STUDY!

「趣味は(まき)割り、好きな言葉は…筋肉です!」(歌詞より)

 慌ててむつみが、おかもんたに尋ねた。

「これ悪いですけど、何で知ってるんですか?」

「え、『何で知ってるの』とは、どういうことですか?」

「だって私――」

「『私』ってどういうことですか?」

「…………え?」

「まだ誰のことか何にもわかってないですよ。ある『超大物クラスメート』の話ですから」

「あ〜、そうなの……」

「ええ、ええ。そうですよ」

「そんなわけあるかい」

 あいこが以下同文。

「……早めにやって、早めに終わりましょうか」

「わかりました」

《そして衝撃の真相が!!》

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?

「その筋肉に興味のある超大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に幼なじみに言う口グセはどれ?」

「幼なじみ?」

 長谷部が、その聞き捨てならない単語に反応した。

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて

「『水持ってきて』――」

「それはないです」

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて B:ご飯作って

『ご飯作って』――

「それもないですよ」

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて B:ご飯作って
C:お風呂沸かして

「『お風呂沸かして』――

「ないですないです……それで、最後のDは?」

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて B:ご飯作って
C:お風呂沸かして D:×××××

「『×××××』――

 一気にざわめく会場。と同時に、思わず倒れ込む――


《遂に暴かれた秘密とは!!》



〜CM〜



 CM明けなので、途中から始まる。

 もっとも『めちゃイケ』はその点かなり良心的なので、それほど前まで戻ったりはしないが。

「……それで、最後のDは?」

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて B:ご飯作って
C:お風呂沸かして D:技かけさせて♪

「『技かけさせて♪』――

 一気にざわめく会場。と同時に、思わず倒れ込む――長谷部。

 ひゅーひゅー冷やかしの声が響き渡る。頭を抱えて、長谷部は叫ぶ。

「……やめろー! やめてくれー!!」

 お構いなしで、おかもんたは続けた。

「ちなみにね、むつみさんも幼なじみがいらっしゃいますから。どれくらいのお付き合いになるですか?」

「家が近所なんです。だから、子供の頃からずっと。その割に『#』19話の『どれみとはづきの大げんか』のソナチネ幼稚園時代の回想シーンでは、私が出てきてもその彼は影も形も見えないですけど」

「その彼とは、仲いいですよね」

「ええ。仲いいですけど、こんなことは言ったことないです」

「そうなんですか」

「はい。AからCまでは」

「限定すんなっ!! そこっ!!」

 何やら長谷部がわめいているが、二人は気にしていない。

「AからDまでちょっと……実際に言うてみましょか」

「D以外は言ったことないですけど――『長谷部くーん、お水ちょうだーい』」

「だから否定しろ、Dも!! しかも名前出しちまってるし」

「……ああ」

「……イメージ通りだよね」

「誰がだっ、春風に飛鳥!」

 続いて。

「Bはどうですか?」

Bは……『長谷部くん、ご飯ー』」

『おぉー』

 観客が大いに納得する。

「Cはどうですか?」

「『お風呂ー』」


『おぉー』

「Dはどうですか?」

「『長谷部くーん、今日もまたジムの練習相手をボロボロにしちゃったのー。どうも、イマイチ練習不足なのよね。だから……技かけさせて♪』」

『おおぉぉおおーー!!』

「何のためらいもなく言うなー!! しかも異常に付け足されてるし!!」

 拍手の渦に、長谷部の声がかき消されていく。



《ここまでの『クイズ$マジオネア』は、楽しい時を作るバ○ダイと!! ご覧のスポンサーの提供でお送りしました!!》

 心なしか、ナレーションの提供クレジットも気合が入っている。



「ちなみにむつみさん。今までの、このコーナーの正解率は――Dが100%です」

「ええっ、そうだったのー!? ハナちゃん全然わかんなかった!」

「……今気づいたの?」

 なおみが汗をたらしながらツッコんだ。

「じゃあ、もちろんDで♪」

「迷えー!! 戸惑え少しはー!!」

 長谷部の声はむつみに届かない。

「Dの?」

「『長谷部くーん、また相手いなくなっちゃったのー。こんなこと頼めるの長谷部くんしかいないしー、だからお願い♪』」

「もはや技の一っっ言も出てねぇっ!!」

 そしてもちろん、おかもんたは気にも留めない。

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー!」

その筋肉に興味のある大物クラスメートが、疲れて家に帰った時に
幼なじみに言う口グセはどれ?
A:水持ってきて B:ご飯作って
C:お風呂沸かして D:技かけさせて♪

「…………………………………………………………………………………………………………………………………
…………………………………………………………………………………………………………………………………
正解おめでとう!」

・¥100・

 再び。会場から拍手が巻き起こる。

STUDY!

どうやら、もうすぐ中学生だというのに、まだ恥も外聞もなく相手をしているらしい。

「おい、テロップの主語おかしいぞ主語! 誰が回答者なんだよ!?」

 無論、おかもんたは長谷部を無視。

「正解でしたね、やりました! これ、お兄さんなんかもむつみさんの練習場面とか見たことありますか? むつみさんのですよ」

「アルゾコノヤロー」

「ありますか。どんなところを見たことありますか?」

POINT!

兄が目撃した工藤むつみと長谷部たけしの秘密!!
「練習試合リハーサル事件」

「……イワセルナコノヤロー」

「言えよ!? 別にやましいこと何にもないぞ!?」

「あー、やっぱりお兄さんですね。妹の成長が複雑なんでしょう」

「そんな話じゃねぇ!!」

 いい加減、声が枯れ始めた長谷部。その隙を、おかもんたは見逃さなかった。

「どうしました長谷部さん。首筋叩いてますよ鼻血出てるんですか?」

「……のぼせたんだよ、大体なんで回答者でもない俺が――」

「処理法が、ちょっと古いかも。長谷部くん」

「お前だけには絶っっっ対言われたかねぇよ、伊集院!!!!」



《いよいよクライマックス!!》

「3問目――」

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?

「それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに間違えられる超小物クラスメートは誰?」

「待てーー!?」

 長谷部が疑念たっぷりに叫ぶ。

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?
A:キグナス氷河(聖闘士(セイント)聖矢)

「キグナス氷河――」

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?
A:キグナス氷河(聖闘士(セイント)聖矢) B:チボデー・クロケット(機動武闘伝Gガンダム)

チボデー・クロケット――

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?
A:キグナス氷河(聖闘士(セイント)聖矢) B:チボデー・クロケット(機動武闘伝Gガンダム)
C:骨川スネ夫(ドラえもん)

「骨川スネ夫――

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?
A:キグナス氷河(聖闘士(セイント)聖矢) B:チボデー・クロケット(機動武闘伝Gガンダム)
C:骨川スネ夫(ドラえもん) D:長谷部たけし(おジャ魔女どれみ)

「長谷部たけし――

「違うだろ絶対!! 俺、回答者じゃねぇだろ!! しかも小物かよ!?」

 全ての目論見に気づいた、長谷部が絶叫する。

 今日のターゲットは、他でもない――自分だったのだ。

「これ、よ〜く考えたらわかりますよ。一つだけですから。あとは違う作品の登場人物です」

「はーい」

 素直にうなずくむつみ。

「よ〜く考えなくても、書いてあるだろうが!! 『料亭』って!!」

「おお、気づかれましたか。さすが長谷部さん」

「うるせぇ黙れ!!」

「Dで♪」

「お前も何の疑いもなく――って聞いてンのかオイ!?」

 聞いてない。

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびマザコンに間違えられる超小物クラスメートは、Dの――

「長谷部くん♪」

「ああああああああああああああああああああ」

「ファイナルアンサー?」

「ファイナルアンサー♪」

それほど幼なじみと親しいのに、家の料亭を手伝うたびにマザコンに
間違えられる超小物クラスメートは誰?
A:キグナス氷河(聖闘士(セイント)聖矢) B:チボデー・クロケット(機動武闘伝Gガンダム)
C:骨川スネ夫(ドラえもん) D:長谷部たけし(おジャ魔女どれみ)

「…………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………………………………………………
……………………………………………………………………………………………………………………
…………………
正解おめでとう!」

・¥1000・

 ファンファーレと共に。三たび。会場から拍手が巻き起こる。

 どっちかってったら、長谷部に向かって。

STUDY!

もうすぐ中学生になるはずの長谷部たけしが、年甲斐もなく「技かけさせて♪」やってるのに、
筋肉に興味のある幼なじみの相手をしても誰にもとがめられないのは、マザコンだからである。

「最後のは断じて違ああああああああああああうっっっ!!!!!!!!!」

 割れんばかりの声で叫ぶ長谷部。彼を、出演者全員で取り囲んだ。

「……諦めなよ、長谷部くん……」

「そうよ、犬に噛まれたと思って――」

「…………何かもー……無茶苦茶もええとこや……」

「……もう嫌。帰る」

「Oh,God……これもウンメイってやつなのかな……」

「ねーねー長谷部くん、マザコンって何?」

「ところで私……何しに来たんだろう?」

「さぁ…………」

 どれみたち8人が、申し訳程度につぶやいた。大した出番もなかったからである。あったらあったで困ったろうけど。

 そして。

「お、おい!? 大体お前もお前――」

「賞金1000円かぁ〜。ねぇ長谷部くん、これで新しいリングシューズとか買えるかな?」

「無理だろ。1000円じゃ」

 おかもんたの署名入りの、1000円の小切手を嬉しそうに抱えて話すむつみにツッコんだ彼は。

「いや〜、長谷部さん、おめでとう!!」

「やかましいっっ!!!!」

 握手を求めてきたおかもんたの右手を力いっぱい振り払いながら、静かに悟った。

『ダメだ。この幼なじみには一生勝てねぇ』と。

 と。

 その肩へ、ポンと置かれた手の感触に気づいた。

 振り返ると。

 心なし泣いているようにも見えた――矢田まさるがいた――



『クイズ$マジオネア〜むつみ祭り応援スペシャル』。また来年、お会いしましょう!

「ナメんな」

 完。


蛇足解説。

はい。『めちゃ2イケてるッ!』の名物コーナー、『クイズ$マジオネア』からのネタです。

「2001年3月10日からO.A.され始めた、『クイズ$ミリオネア』のスタイルを模した新コーナー。司会者は岡村隆史扮するおかもんた。
マジオネアとは『MAJI + ON AIR』(マジでO.A.するの?)の意味で、回答者となるめちゃイケメンバーにクイズ形式でプライベートのシャレにならない告白を迫り、電波に乗せてしまうのが真の目的という、史上最大の理不尽クイズである。
ちなみに初回の回答者だった加藤浩次は、ミキ以来の新しい恋人「女優のカオリちゃん」(※現加藤夫人、引用者注)の存在を、たった1,000円の賞金と引き換えに全国ネットで知られることとなってしまったわけだが、告白内容と賞金額のアンバランスさは、昨今のテレビ業界に横行する拝金主義、賞金目当てにタレントが素を晒して一喜一憂する風潮に対する風刺にもなっている」
(『めちゃイケ大百科事典 エンサイクロペディア』(フジテレビ出版、2001年)、「クイズ$マジオネア」より)

いつか、ネタにしたかったんですよね。
それで、最初は「ゆき先生」を回答者にして、とある個人誌で発表しようと思ったのですが、ページの都合上断念。
文中出てくるネタは、その際使用する予定だったものです。

で。
今回、原典にちょっとひねりを加えた上で、『むつみ祭りスペシャル』として書いてみました。
ホントに書き上げちゃうあたり、バカですね。間違いなく。

フォーマットは、2003年4月5日の『めちゃ2イケてるッ! キダムじゃなくて期末 岡女。も来てるね〜! スペシャル!!』内で放送された、「クイズ$マジオネア家族応援スペシャル」。
和田アキ子さんを回答者に迎え、夫とのラブラブぶりを暴露した回でした。
……他意は、ないです。ないですよ?(笑)



というか。
どうして長谷部をオチに持ってきたんだろう、自分……このキャラ確定か、長谷部。

少なくとも「むつみ祭り」に出展するべきSSではないと思われます。

スミマセン。切腹。ぐふっ



異常以上、お笑いバカの筆者の本性とも言えるSSでした。

……というか、番組風のテロップとか書いてる時点で、純粋な「SS」とは呼べないですけどね。ご容赦ください。


公開日:2003年06月23日
第一次修正:2003年10月15日