『再起〜Green Leaves』

・アバンタイトル:『ONE PIECE』本編(???)

・オープニング:「私がいるよ / TOMAMO CUBE」(『ワンピ』3rdEDテーマ)



 ぽっぷのピアノの発表会。まぁ色々あったが、とりあえずぽっぷは見事に演奏を終了した。彼女を嬉しそうに迎えるどれみたち、そして両親。

 ……だが、その影で切なそうな表情をして、彼女たちを見つめている少年が1人。しかしそんな彼の存在に、どれみたちは気づくことはなかった。

 その名は――暁。



 彼はこっそり、こっそりと、人間界にやってきていた。たった独りで。魔法使い界と魔女界の国交が回復して以来、会っていなかったどれみの姿を、一目見るために。たった…それだけのために。

 だが、彼は自分からどれみに会おうなどとは考えていなかった。自分たちが執拗に狙っていた――それが魔法使い界のためであると信じて――ハナが、魔女界の先々代の女王の呪いで命の危機にさらされた時、さっぱり出番のなかった、もとい何もしてやれなかった、自分を恥じていたから。

 だが、その判断は別の意味からも正解だったのかもしれない。なぜなら……

(どれみちゃんたちは……僕たちのことを覚えているのか?)

 と、暁が胸中でうめく。それは疑問の形を以って発せられた心のつぶやきだが、事実上は反語体だった。

 そう、覚えているはずなどない。自分が彼女に対して行った仕打ちを考えれば。ならば自分が、どれみと会う資格などない。

 いや、必要すら、ない。

(僕はもう……彼女に必要とされていない)

 暁は知っている。彼女の姿をずっと見ていたから。10という番号が大きく書かれた服を身につけた、髪型がちょっと某ハンター×ハンターのLオリオ入ってる少年。彼だろう。今、彼女が必要としている人は。

(僕と小竹のこの差は何だ……? 新シリーズに入り、伊藤という新たな相棒を得たことで木村をあっさりと切り捨て、どれみちゃんの前の席もしっかりキープし、存在をなおもアピールしつづけている……そんな彼の前向きの姿勢が、今のこの差を作っているのか……?)

 そして、暁のもうひとつの懸念。出番の少なさだ。

 てゆーか、出番が皆無なのだが。

(『も〜っと!』に入ってから、エンディング以外でめっきり出番のなくなったぽっぷちゃんも、何事もなかったかのように、彼女たちの輪に溶け込んでいる……ピアノという新しい分野に挑戦しつづける、彼女のひたむきな姿勢が、再登場の布石となったんだろうな……)

 そう自己完結し、会場を出る。

 途端、狙い済ましたかのように照らされる、日の光。その眩しさは、まさに小竹であり、ぽっぷであった。

(何が間違っていたんだろう……僕は。きっと何もかも間違っていたんだ。父の命令をオジジーデが間違えて解釈してしまったあの時から、僕の人生の転落は始まったんだ。ああ……できることなら、もう一度『#』第25話、2000年7月30日午前8時30分に戻って、人生をやり直したい……!)

 額を抑え、頭をたらす暁。

 その時――



「やったー!」

 その、突然の叫び声に我に返った暁は、その声の主を探そうと振り返り……絶句した。

「人生、崖っぷちだー!」

 叫びはそう続けられたが、暁にはそんなことはもうどうでもよくなっていた。そして腰に手を当て、右足だけつま先を立てて、右上を向いているそのポーズも。

 暁の全神経は、その男――どう見ても男だった――の身につける服装に、注がれていたから。いや、それを「服装」と呼んでいいかは多言を要さずとも、結論が出るであろうが……。

 はっぱ。

 はっぱ1枚。

 それだけが、その男の股間に張り付いていた。

 一応、その部分を隠そうと思うだけの恥じらいはあるようだったが、それだけで彼が露出狂であるという推測を打破できることは出来そうもなかった。当たり前だが。

「これで君は、自由だー!」

 さらに続ける男。

「やった、やった、やった、やった」

 そして男は、とうとう踊りだした。拳を握り、肘関節を上向きに90度曲げて、ステップを左右交互に踏んでいる……

 その姿に、暁は確信した。

 彼はヘンタイだ。

 そのヘンタイを、仮にN原と呼ぶことにする。

「やったー!」

 その理由は、続いてその場にまた、新しいはっぱの男が現れたからだ。

「これで君は、どんなに新しい事だって挑戦できるぞー!」

 その2人目の男をH田と呼ぶことにする。

『やった、やった、やった、やった』

 2人一緒に踊りだした。

「やったー!」

「まだいるのかっ!?」

 思わず、ツッコミが口に出る暁。

「『#』の1年間より、『も〜っと!』の1年間が、も〜っと! 大事なんだー! やった、やった、やった、やった」

 今度は3人で踊りだす。3人目を、N倉と呼びたい。

「主人公の大ピンチに駆けつける、さすらいのヒーローにだってなれる!」

「王子という設定をフル活用して、某ワンピースのビビ王女のように、王国復活のために紛争することだって!」

「恋したって、いいじゃない!」

「おい最後の奴、それお前の持ちネタだろ」

 なぜかそのツッコミだけは、やけに冷静に出てきた。

 最後の――最後であることを祈りたい――3人を順番に、H内、O内、O木と呼ぶ。

『やった、やった、やった、やった』

 とうとう6人で踊りだす、はっぱの男たち。その光景たるや阿鼻叫喚。特にO木の油断しきった肢体が、他の5人との余りの落差と合間って、それはそれはエラいものがあった。

 と。リーダーらしきN原が踊りを静止し、言い放つ。

「よーし! 今日は初めてのテレ朝進出、そして初めてのアニメ界進出を祝して、一曲、唄うぞー!」

『おーう!』

「唄うのかっ!?」

 賛同する5人。驚愕する暁。

「オリコン最高位6位入賞と、17万枚の売上達成(※2001年6月30日付けのデータより)、みんな応援どうもありがとう!」

「何だって!?」

 N原の感謝の言葉に、暁は言葉もなかった。

(人間界では……こんな連中の出す歌が、そんなに売れるのか……!?)

 暁の、実に真っ当な思いをよそに、そのはっぱの男たちは、それはそれは楽しそうに、その歌を唄いだした……



※日本音楽著作権協会か何かの存在を警戒し、歌は省略(笑)



 ……見事に唄い終わった、はっぱの男たち。その満足そうな表情を見、そしてその歌の歌詞を聴いて、暁にはなぜか晴れ晴れしいような、そんな思いが込み上げていた。

「……ありがとう」

 そしてもうひとつ。自分を励ましてくれた、彼らへの感謝の気持ちだ。

「あなたがたのお陰で、立ち直れそうです!」

「その通り! 君の人生は、君自身の手によって切り開いていくものなんだ! そんな、この先の希望で胸がいっぱいの君が」

『うまらやし〜ぃ』

「うらやましい、だと思いますけど」

 N原に合わせ、6人全員で、右ひじを前に出すポーズまでつけて言ってくる彼らにツッコミを入れるも、もはやそんなことは暁にはどうでもよかった。

「よ〜し! 彼の再出発を祝って、この辺で最近有名な『MAHO堂』というお菓子屋に行って、おやつをたらふく食うぞ〜!」

『おーう!』

 N原の提案にうなずく、残りの5人。

「あ、それなら……」

 どれみちゃんたちによろしく、という言づてを、彼らに頼もうとした暁だったが。

『ひゅう〜〜!』

 という奇声をあげながら、その場を去って行く6人の前に、その言葉は飲み込まれていた。

 言づてなど、今の彼には、もう必要ない。

 そして暁は、魔法使い界に帰ろうとし……。

 振り返ると、そこには彼の友達がいた。

 フジオ、レオン、トオル。

 共に戦った、仲間たち。

 笑っている彼ら3人に、暁はめいいっぱいの笑顔を返した。そう、自分は独りではないのだ。

 今は、それだけで充分だ。

 そう、彼は生きている。はっぱ1枚あればいいかどうかは知らないが、生きているからラッキーなのだ。

 そのことを彼に教えてくれた彼らは、おそらく天使なのだろう。迷える人々に救いの手を差し伸べるべく、神々が差し出した使いなのだろう。少なくとも暁はそう思った。

 ……彼らはいつかきっと、どれみたちの前に姿を現すだろう。それがどんな形であろうとも。それが誰にも望まれちゃあいない再会であろうとも。

 その時まで。

(……バイQ、どれみちゃん)



 その後。

 MAHO堂から物凄い勢いでフッ飛ばされた、はっぱ1枚つけた中年のおっさんたちの姿を、小竹は確認している。

・エンディング:「VENUS / SHOCKING BLUE」(『笑う犬の冒険』OPテーマ)

・次回予告:『チューチューディレクターvsおんぷ』(やめれ)



 ……オチないまま、完結。


蛇足解説。

この文章は、2001年6月末に、『どれみっち研究所』さんの投稿小説コーナー「おジャ魔女SS」内の、「おジャ魔女どれみ外伝」に投稿させていただいたものです。
それまで、どれ研さんには「どれ辞苑」という投稿辞典コーナーに投稿させていただく、という形でお世話になっていたのですが、そのコーナーは「辞典」という特性を考慮して、匿名制でした。てなわけで、そこを訪れるかたがたと、ほとんどコミュニケーションはとっていなかったわけです。

ですが…まぁ。やがて、かようなネタを思いつき、投稿したわけです。そこは掲示板と同じように、ハンドルネームが出る場所。
ならば掲示板で、きちんとご挨拶をせねば、と…初めて、掲示板のほうにも投稿したわけです。
こんなSS書きました、と。

……………

こんな文章を手土産(???)に、初めましてのご挨拶をされた側は、さぞかし混乱したことでせう。
…ごめんなさい。もーしません…
ちなみにレスしてくださったかた全員、「はっぱ隊」のコントは未見だったそうです…それでもレスをいただけて恐縮でした…はぅぅ。

結局『笑う犬の冒険』をご存知でなければ、どうしても楽しみにくい文章ですからね…
『ワンピ』の後の時間にやってたから(だからOPが『ワンピ』なんです)、少しは知名度があるかと思ってたんですけど…考えてみれば筆者だって、戦隊もライダーもデジモンも、コメットさんすらも見てませんでしたからね…
いやそもそもが、あのFLAT4ネタだったってことも問題かも。



んで。
内容ですが、まぁご覧の通り。
テーマは「暁救済計画」です。

当時やっと『どれみ』に本格的にハマり始めていた筆者は、「何もそこまでFLAT4を拒否しなくても…」って思ってました。
そーとー嫌われてましたからね。彼ら。って今もですかね?
筆者的には、そこまで嫌ってはいませんでした。当時からはづきストでしたが(そしてこの頃から、だんだんと「2番目がももこ」というポジションが確立し始めた…)、別にフジオはどーとも思ってなかったですし。何せ彼は矢田とカラんでくれたので。『#』では暁と小竹は出会わなかったのにもかかわらず。
余計に「矢田×はづき」な展開が見られたわけですから万々歳です(笑)。要するに、フジオをかませ犬としか見てないんだな、筆者は…

そして暁。まぁ筆者はカップリング完全推進派なのですが。具体的には矢田×はづきを筆頭に、小竹×どれみ、あいこ×おんぷももこ×麗香様、きみたか×ぽっぷ、オヤジーデ×ハナ…って明らかにイレギュラーが混じってますが、それは置いとくとして。
ならばその和を乱すFLAT4はキライなのか、と言われると、やっぱりそうでもなかったりします。
(それとは違う理由で、芸能界というプロの世界で生きるおんぷの信念を全く理解していなかったトオルには、「仲間を笑う奴はこの俺がブッ飛ばす!!」的な感想を抱いてましたが)

…特に暁は、魔法使い界の"王子"なので。
ああ、彼にも闘うべき理由と、確固とした信念があったのだなぁ…と。

「君たちに、この子を守る義務があるように、僕には魔法使い界を救う義務がある」(『#』46話より)

「O内」というキャラに「ワンピースのビビ王女のように…」と言わせてますが、結構同一視したりしてますよ。筆者は。
どちらも生まれた国を助けたいから、だからこそ人間界に潜り込んだり、バロックワークスに潜り込んだりしたわけですから。
ま…暁は相当遊びまくってましたが、ビビだって冒険しまくってたからおあいこです(←そうか?)。

どうせなら、それこそビビのように、彼の苦悩を描ききれば、もう少し人気が出たのでは? と思ってます。
遊びまくってるように見せかけながら、魔法使い界への思慕の強さを垣間見させて、"王子"であるという前フリをしておく(何せ本編で"王子"という設定が明かされた時は、どう考えても唐突だったので…)。そして想いを寄せ始めた「どれみ」への私的感情と、「国」を思う公的感情の葛藤を…
って、既に『どれみ』じゃないですな、それは(笑)。
どれみ的でないものを求めすぎるのもおかしいので、この辺にしておきます。

というわけなので、『も〜っと!』に入ってからこっち(正確には『#』のラスト2話から)、さっぱり出番のなかった暁以下FLAT4に、筆者は割と(笑)同情してました。
そして、本文中にあった「ぽっぷ」。この話まで、ずっとぽっぷの出番はなかったんです。不自然なほど。その原因には様々な憶測が飛び交いましたが、結局真相はわからずじまい。結局この『も〜っと!』17話「因縁のライバル!! 春風と玉木」において、ぽっぷは帰ってきました。何事もなく。けど…

木村は?(←木村かよ!!)

木村たかお。小竹の親友。ただし『無印』&『#』の頃は(大爆笑)。彼の出番も、『も〜っと!』12話のチョイ役以外ではさっぱりなく、セリフのないまま現在に至っています(涙/2002年8月4日現在)。誰かのセリフの中には出てくるのに、って最近出番のないキャラのフォローは全てこのパターンなのですが(苦笑)。
それすらないのが、FLAT4でした。

彼らは『も〜っと!』全シリーズにおいて、その存在すら「なかったこと」にされていたような気がします。
どれみのセリフの中にすら、その名前は聞こえなかったんですから…

まぁ当時はそこまでの事態に発展するとは思ってなかったのですが、とはいえ出番がないのは悲しい。割と(笑)。
そう思った筆者は、稚拙を承知で「二次創作」の場で彼に活躍の場を与えることにしました。

ヘタレキャラとして(爆笑)。

いや、だってぴったりだったんですよ! この暁の境遇、『笑う犬の冒険』の人気コント「はっぱ隊」においてはっぱ隊に励まされる、内村座長演じる色んな人の役に! 受験に落ちた浪人生、リストラされたり外人の上司と上手くやっていけないサラリーマン、落ち目のアイドル…
しかし、はっぱ隊の「ウソポジティブ」(『週刊プレイボーイ』で特集組まれた時の表現。なかなか言い得て妙でした)な生き様に、「生きてるだけでラッキーだ!!」という歌詞に、背中を押されて前に進んでいくことにした(???)彼ら。
その列の中に、この暁を加えようと思って、何の不思議があろうか!?

…すんません。こんな人間で。切腹。ぐふっ

ちなみにもうちょっとぽっぷの復活が遅れていたら、このSSの主人公は暁でなくてぽっぷになっていたかもしれません(笑)。
でなきゃ前述の木村か。
(他作品から引っ張り込めば、『魔術士オーフェン無謀編』のオーフェンか、『ジャングルはいつもハレのちグゥ』の主人公ハレが似合ってますが…)



……そして。
結局暁率いるFLAT4は、『ドッカ〜ン!』の修学旅行編の11話で、多くのかたの予想を裏切り…いやその予想すら忘れてしまっていた頃に、帰ってきました。
あなやめでたや…と、思いきや。

筆者は皆様の1年半遅れで、アンチ暁派になってしまいました(笑)。わっはっは。

何故って…彼、初邂逅を果たした小竹とのどれみ争奪戦(?)の紙相撲対決において、負けそうになったから魔法を使ってしまったんです。

モンキー・D・ルフィ「決闘(たたかい)を汚す奴は、男じゃねェ!!!!」(『ONE PIECE』第126話より)

…そうでなくても、お前"王子"だろ。だったらも少し《魔法》の意味も考えろよ。いや確かに切羽詰って使っちゃったのかもしれないけど、それが人間・魔女・魔法使い共通の「心の弱さ」かも知れないけど、仮にも"王子"がそゆことしちゃダメだろ。
そして何より…お前はどれみたちの《魔法》の使い方を見て、何も学ばなかったのか、と――

オーフェン「全然……進歩してねえ……」(『魔術士オーフェン無謀編』第5巻「あきれてものも言えねえぜ!」より)
(…すみません、またオーフェンネタやってしまいました…)

ううむ。帰ってきたら帰ってきたで、複雑ですね…

でもまぁ、最後に「ズルしたんだ」と小竹に白状したし、また帰ってきてくれることでしょう。
つか、誰が何と言おうと、あれで出番終わりというのは納得できませんからね。筆者は。

その日まで…「バイQ」(by はっぱ隊)、暁。



以上、「生まれて初めて書いたどれみSS」でした(どーん)。
……よくわかると思います。この筆者がどんな人間なのか……


PS 本編中ではあえて伏字にしましたが、はっぱ隊の構成員を紹介します(笑)。

 N原 = 南原清隆さん(ウッチャンナンチャン)
 H田 = 原田泰三さん(ネプチューン)。この後出てくる「半分の人」を演じるのもこのかたです。
 N倉 = 名倉潤さん(ネプチューン)。リーダーです。
 H内 = 堀内健さん(ネプチューン)
 O内 = 大内登さん(元・ビビる)
 O木 = 大木淳さん(元・ビビる)

いや何故って、あくまでもこれは演者の名前であり、コント内でのキャラ名ではなかったので……しかも、名前の設定ないし。


公開日:2002年08月04日
第一次修正:2002年09月23日
第二次修正:2002年10月14日
第三次修正:2003年10月15日