横川信子 Yokokawa Nobuko

 今日のテーマは、「あいちゃ〜ん♪」です。

T>いきなりかよ!

 横川信子。彼女は生まれてこのかた、妹尾あいこの伴侶となるべく運命付けられた少女です。

T>何言ってんだお前。

 二人はごくありきたりな展開で出会い、ちょっと意外な展開で結ばれ、強引な展開を経て共に生きていきます。

T>どんな展開だよ! ちゃんと説明しろ。

 しかしそこに立ちはだかる悪魔。彼女の名は瀬川おんぷ

T>そこは玉木や林野じゃないんだな。

 愛憎渦巻く戦いの果てに、信子は悲痛に叫ぶ。「ぼくだけの力できみにかたないと……。ドラえもんが安心して……、帰れないんだ!」

T>何でのび太なんだよ!

 おんぷも負けじと、「怨恨のみで戦いを支える者に私は倒せぬ。私は義によって立っているからな!!」

T>今度は『0083』のガトーかよ。しかも絶対義の上なんかに立ってねぇだろ!

 ヒイロも言います。「五飛、自爆スイッチを押せ!」

T>関係ない人まで出てきちゃったよ。

 ドモンはマスターの亡骸を抱えながら「師匠ぉぉぉ!!!!」と……

T>いい加減にしろ!

「マジカルステージ! ハナちゃんを助けて!」

T>今さら『どれみ』に戻っても遅ぇよ! しかもロイヤルパトレーヌになってどうすんだよ。

 助っ人として現れたスーパーももこのピンチ。そこに現れたのは…少年探偵縦川!!

T>夢の共演だ。

 親友あいこに借りを返すべく現れた縦川。しかし彼らの前に立ちはだかったのは…コマンダー・ハナ!!

T>敵になったの?

「何故、君がここにいる!?」問う縦川に、ハナはきっぱりと言い返す。「行けー、ハナちゃんのために戦うのだー!!」

T>質問に答えろ!

 そんな多くの仲間に支えられながら、信子は遂におんぷに奪われたあいこのオーバーオールを奪取する。

T>そんなことのために戦ってたのかよ! 特にヒイロとドモンは。

 追い詰められたおんぷは、あいこもろとも自爆しようとする。

T>よくある気がするね、そんな展開。

 しかし、地球には巨大な隕石が迫っていた!! 地球滅亡まで後3秒!!

T>唐突すぎるよ! しかも3秒って、もっと前に気づかなかったのかよ。

 あいこを救うか、それとも地球を救うか。究極の二択の前に、信子は三日三晩悩み続けます。

T>悩みすぎだよ! あと3秒なんだろ!?

 その時遂に、最終兵器どれみロボが出撃!! もちろんパイロットは妹尾あいこその人!!

T>おんぷと心中させられようとしてたんじゃないのか?

 おっと、おんぷは仕事があるというので既に仕事場に行ってしまいました。

T>そのまま帰ってくんな!

 信子は仲間たちに呼びかけます。「みんな、あいちゃんの勝利を祈って!!」

T>祈るだけなのかよ!! お前も何かしろよ!!

 宇宙に飛んでいったあいこは、隕石を前に強烈な頭突きをくらわせる。

T>パンチじゃないんだ。

 パイロット本人の。

T>ロボの意味ねぇよ!

 爆発する隕石。それを目の当たりにした信子は、その場にへたり込む…

T>エンディングだね。

「あいちゃん…もう一度…オーバーオールを着てほしかった…」

T>そんなことを悲しむのかよ! こだわりすぎだよ!

 だがその時、信子は驚くべき声を聞いた。「ふぁ〜、よく寝た」「あ、あいちゃん!?」

T>生きてたんだ。

 何も知らずに、ずっと寝ていたと言うあいこ。「じゃ、じゃあロボに乗ってたあいちゃんは…!?」

T>誰だったの?

 はと気づく信子。「みほみほは…みほみほは!?」

T>彼女だったんだ。

 彼女は自ら身を引き、信子とあいこのために自爆を決行したのだった。

T>哀しい結末だね…

 信子は涙をこらえて言った。「ありがとう…みほみほ。私たちはあなたの名前を忘れない…みほ山みほみほ

T>本名覚えてねぇのかよ! しかもどんな間違えかただよ!

 完。

T>完じゃねぇ。

 …これで本当にいいのでしょうか。

T>知らねぇよ!

 彼女のあいこへの執着振りがよくわかるのが、『♯』10話です。信子の書いた新作は恋愛もの。ヒロインの名は妹尾あいこ。そのまんまです。

T>『少年探偵縦川』の時もそうだったけどな。

 そして相手役の名は「横川信」彦。そのまんまです。

T>ハハハハハ。

 物語は2人が結ばれて終わります。こんなわかりやすい自己表現があるでしょうか。

T>ハハハハハ、まぁな。

 そしてその真意に気づかないあいこもあいこです。どれみ以上の鈍感さです。

T>そうだよなぁ。

 表現者は、時に自分の思いや考えを作品に盛り込みます。意識的に行うこともあれば、無意識に行っていることもある。つまり全ての表現者は、その生み出す作品によってその精神をむき出しにさらしているということになるのです。

 それ自体は、悪いことではありません。表現を生み出すのは、あくまでも自分自身が行うことなのですから。

 しかし彼女にとって表現したい存在とは、「妹尾あいこ」だけなのでしょうか。「あいこに対する自分の思い」だけなのでしょうか。

T>うーん。

 私はそうは思いません。表現者としての武器が、特定の個人だけというのは致命的とすら思います。他に表現したい存在が見つからねば、彼女が自分の夢を叶えられるとは…小説家になれるとは思えないのです。

 要するに、彼女に今必要なのは「あいこからの自立」なのです。あいこが親への幻想にも似た思いを断ち切り、本当の関係を取り戻せねばならないように、彼女もまた、あいこへの思いを昇華させなければならないのです。

 あいこが「両親の復縁」に対して過度の期待を抱いているように、信子も「あいこ」に対して過度の憧れを抱いている。しかし現実は、そうではない。それを受け入れなければならないのです。

 その意味で、彼女とあいこは本当に"親友"なのだと思います。同じ目標を持つ者同士として、これからも彼女たちは"親友"であり続けることでしょう。

 …そして路頭に迷うみほみほ

T>そうだよ! みほみほ忘れてどうするんだよ!

 彼女も彼女で、行動パターンが信子に酷似してます。信子のコピーとすら言えます。

T>ツッコミにくいから困るんだよな。ホントにそんな感じだもんな。

 あいこの思いに決着つけたら、今度はみほみほと決着つけなければならない。随分と多くの課題を抱えた小学生です。しかも百合系の。

T>百合系とか言うなよ! そこは伏せとけよ。

 これだけの密度の濃い出会いを経験した信子。必ずや、この経験を生かして、表現者として大成してくれるに違いありません。どうか、夢を叶えてください。

 以上、コラムでした。


公開日:2002年10月14日