瀬川おんぷ Segawa Onpu
今日のテーマは、「瀬川おんぷ」です。
誰もが知っている、スーパー売れっ子チャイドルの誕生日。そう、3月7日は倉田紗奈の誕生日です。
T>『こどものおもちゃ』かよ!? チャイドル違いだよ!
3月2日がサンジくん、7月3日がナミという、『ONE PIECE』並みの短絡的な誕生日です。
T>放っとけよ!
もし紗奈の誕生日が3月6日だったら、彼女の名前はサムになっていたという逸話は有名ですが……
T>わかったからおんぷの話をしてくれよ!
そう、3月3日は我らが元・チャイドル――両津勘吉の誕生日です。
T>チャイドルですらねぇよ! 確かに誕生日は一緒なんだけどな。
奇縁か宿縁か、同じひなまつりの日に生を受けた二人。両さんにとっては、むしろこちらの唄のほうがお似合いかもしれません。
「明かりをつけたら消えちゃった お花をあげたら枯れちゃった」。
T>子供の替え歌かよ!
「浅倉威に殺されて 今日は悲しいお葬式」。
T>なんで王蛇が出て来るんだよ! 「五人ギャング」とかじゃないのか!?
もっともあの両津勘吉を倒すのには、たとえ《仮面ライダー王蛇》とて不可能なのでは、と思います。
T>知ったこっちゃねぇよ。
しかし考えても見れば、かたや「いい年して真面目に仕事しない」警官。かたや「子供なのに真面目に仕事する」芸能人。こんな対照的な二人が、同じ日に生まれついたことに対して、何やら深い皮肉を感じるのは私だけでしょうか。
T>お前だけだろうな。
しかも、こんなに違う生き方をしている二人なのに、どちらも人々に愛されている。これは特筆に価します。どうやら3月3日生まれの人間には、人に好かれるオーラを持って生まれてくる、そんな素質があると考えてよさそうです。
T>うーん。
他にもたくさんのアニメキャラが、この日には生まれています。『ハンター×ハンター』に登場した、あの髪型が小竹そっくりな医者志望のフケ顔の人。
T>レオリオって言いたいのかよ!
あのサングラスを普通のメガネに替えたら渓介さんになります。
T>もういい。
そう、最近原作ではめっきり出番がなく、OVA第2シリーズでも出番は全く期待できそうなレオリオです。
T>いちいち説明するなよ!
クラピカはちょっとだけでも登場しているのに、彼は出番皆無。どうやら3月3日に生まれたからといって、必ずしも人に好かれると決まったわけではなさそうです。
T>出番だけで決め付けるなよ!
他にも3月3日には、たくさんの人が生まれています。
まずは、日本社会党初の総理大臣経験者、村山富市さんがそうです。
T>そうなんだ。
他にも現・経済財政政策担当大臣の竹中平蔵さんや、社会学者・東京都立大学助教授の宮台真司さん。タレントの栗田貫一さんや、マッハ文朱さん、小松千春さん。ジーコさんやケント=デリカットさんもそうです。さらには数学者のゲオルク=カントールや、かの有名な発明家アレクサンダー=グラハム=ベルも、彼女と同じ3月3日に生まれているのです。
T>凄いじゃん。
しかし誰一人として、瀬川おんぷの活躍には足元にも及びません。
T>そんなことねぇだろ!!
阪神大震災の折にはひどく不手際な対応をし、「初めてのことじゃから」と責任を放棄した村山元首相。IT産業への過剰の期待や、「絶対にもうかる。私も買う」という妄言まで平然と発言していた竹中大臣。さらには、女子高生の援助交際を擁護した宮台氏など、この日に生まれついた人間はロクな奴がいません。
T>勝手に決めるな! 評価が正反対になっちゃったじゃねぇかよ。
お前ら少しはおんぷ様を見習ったらどうだ!!
T>うるせぇよ!!
まぁもっとも、誕生日なんてものは365分の1、確率にしてわずか0.2%。総人口55億もいれば、これだけの面々が集まって当然です。3月3日に生まれついたからといって、人間どうなるものでもありません。
T>当たり前だよ! みんなそんなことわかってるよ!
そんなスーパーアイドル、瀬川おんぷ。彼女は何だって出来ます。歌も唄え、踊れて、演技もできる。料理もお菓子なら作れるし、魔法だって使える。
T>最後のはアイドルには関係ねぇぞ?
これだけ才能があれば、エレキテルを発明することから刀傷沙汰を起こして非業の死を遂げることまでもできそうです。
T>平賀源内かよ! 人生はしょりすぎだよ。
どうにも彼女の生き方は、この「闇」がつきまとっているような、そんな気がするのです。
かつて『ドッカ〜ン!』が放送されていた時間帯の30分前に、一部地域では『仮面ライダー龍騎』という番組が放送されていました。13人のライダーたちがしのぎを削る、前代未聞のライダー世界を繰り広げた番組。要するに、ガンダムシリーズにおける『Gガンダム』のようなものでしょう。
T>そうなのか?
『どれみ』と『龍騎』、この両方が好きだという視聴者も多く、この2作品を扱ったパロディ等も、それなりに見受けられました。おのおののライダーに扮するどれみたち、という構図なのですが、その配役はもちろん作者によって違います。主人公・龍騎からして、どれみかハナ。色がオレンジというだけでシザースに決め付けられたはづきも、中にはゴローちゃん役を矢田に据えスーパー弁護士こと《仮面ライダーゾルダ》として大活躍する場合もありました。
そこにはそれぞれの作者の、それぞれのキャラクタの解釈が現れていたように思います。
ですが、奇妙にも、ただ一人だけ全会一致の配役を得た人物がいます。そう、「瀬川おんぷ イコール 仮面ライダー王蛇」です。
T>そういえばそうだね。
誰もがおんぷを、弟まで殺した凶悪犯罪者と同一視したということなのです。
T>そんなはっきり言うなよ!!
これはもう、それぞれのイメージカラーが紫で同じだから、という理由だけからきたものではないでしょう。
おんぷファンのかたの中には、今でも彼女に付きまとう、ある一定のイメージをもって彼女を見続けるかたが、少なからずおられます。そう、彼女の初登場時、『無印』時代の"小悪魔"なイメージです。
当時、主人公はどれみ、はづき、あいこの三人体制。そしてはづきの全盛期時代でもありました。
T>だから関係ないこといちいち言うなよ!
それまでこの作品に登場する人物は全員、どこかおかし味のある優しい人たちでした。本当の悪人など誰も登場せず、せいぜいマジョルカ程度のライバルしか現れていませんでした。その囲いを見事に突破してきたのが、瀬川おんぷその人だったのです。
今までの登場人物たちが誰一人欠けることなく持っていて、しかし彼女に存在しなかったもの。それは「良心の呵責」です。かの玉木麗香を家出に追い込むまでの発言を、したり顔で行ったのはあまりに有名です。
そして彼女が扱う禁術「心を変える魔法」が、それを顕著に表しています。ありとあらゆる生物の中で人間だけが持ち得、不可侵であるべきはずの心を、自分の思うように変えていく。他人の尊厳を保つ、それができずにいた彼女は、まさに純粋なる"小悪魔"であったのでしょう。
しかし、それを変えていったのが誰なのか。それはもう、説明無用でしょう。
それから、彼女は少しずつ変わっていきました。『♯』当時はまだ一匹狼的な気質をほのかに残していましたが、『も〜っと!』でそれもなりを潜め、『ドッカ〜ン!』に入ってからはズラをかぶって写真を撮るまでの域に達しました。
T>ハナがやろうとしたんだよ、それは! お前わざと言ってんだろ!
そう、彼女はチャイドルを卒業して、立派なバラドルとなったのです。
T>違う!
もっともあの話でおんぷは、あくまでもプロとして自分が撮影したものではなく、素人に過ぎないハナがおんぷに化けて撮った写真を、自分の名義で出版するといういささか彼女らしくない行動をとっています。ですがまぁこの辺りも、彼女の変化の一端と捉えておくのが良策でしょう。
ですが今でも、彼女のあの"小悪魔"のイメージは消えません。彼女のこの攻撃性を好むファンも、少なからず存在します。
しかしこれは、彼女にとっては非常に複雑なものなのではないでしょうか。
かつて、安達祐美という女優がいました。
T>…いや、今もいるから!
「子役」ではなく、「女優」です。映画『REX』を経て、大ヒットTVドラマ『家なき子』でその名を日本中に知らしめた彼女は、その卓越した演技力から当時、少なくともテロップ上では既に「女優」という肩書きで出演していました。アイドルでこそありませんでしたが、ある意味おんぷの目標となる存在かもしれません。
しかしこのドラマのヒットは、その後彼女を大きく苦しめることになります。『家なき子』主人公・相沢すずのイメージがいつまでも彼女を付きまとい、街を歩いていても「すず」と言われ続ける。他の仕事をしても、「すず」に思われる。有名税とはいえ、「女優」安達祐美としては苦痛以外の何ものでもありません。
その後、彼女が何度も何度もネタにしている「初恋の人を母親に取られた」エピソードを経て、ドラマ『ガラスの仮面』の主演、写真週刊誌での活躍等、少しずつ彼女は『家なき子』のイメージを払拭していきました。
まぁその割に、どこかのCMでは「同情するなら〜」と決め台詞のパロディをいまだに口にしているのですが。
T>放っといてやれよ!
「どじょう食うなら鍋をくれ」。こちらは本当に存在が過去形になってしまったタレントの持ちネタです。
T>ますます関係ねぇ。
ともあれ、この彼女における『家なき子』が、おんぷにおける『無印』だとは言えないでしょうか。
確かに彼女の存在感を大きく引き立てたのが、あの性格であったことは否めません。しかし、今はもう違います。どれみたちを始めとする周りの友だちが、彼女の心を氷解していったのです。そして大きく成長した彼女は、本当のプロの女優として大成しようとしています。
そんな彼女の姿を見ても、今でも『無印』時代の小悪魔のイメージをもって彼女のキャラクタを捉えている。あの「おんぷ
= 王蛇」という公式は、おんぷの『無印』時代の性格が、過去の姿がいまだに引きずられているのだな、ということを十二分に象徴したものではないかと、私は思うのです。
そして、私はこう結論づけます。心苦しい指摘ですが、現在の彼女を、過去の彼女の姿と結び付けるこの風潮は、彼女にとってやはり――
ごく当たり前のことなんじゃないかと思うのです。
T>当たり前なのかよ!?
かつて木村拓哉の主演したドラマ『ギフト』では、主人公がジャックナイフをカッコよく振り回すシーンがよく見られました。それに憧れた多くの少年が、同じようにナイフを持ち歩く。それが社会問題にまで至ったことは、アイドルが及ぼす影響力の凄まじさをまざまざと見せつけることとなりました。近年も、彼がパイロットに扮するドラマに主演するや否や、航空会社の売り上げが上がる。そんなこともありました。
瀬川おんぷも、アイドルです。それも歌も唄え、演技も上手く、何でも出来る最強のアイドルです。彼女の影響力の凄さもまた、MAHO堂の売り上げが彼女の双肩にかかっているという辺りからも伺えますが、それもまた当然です。
結局彼女は最初っから、魔法を一番必要としていなかった人物なのではないでしょうか。禁断魔法など使わなくとも、人心をいくらでも惑わすことが出来る。彼女が右を向けば、誰もが右を向く。彼女が左を向けば、世界中が共産主義国家になる。
T>その「左」かよ!
世界の命運は、全部彼女が握っています。
T>大ゲサ過ぎるよ!
彼女がハリウッドに出て行って、世界的な女優となった時。その影響力がどこまで達するか、それは誰にもわかりません。
しかし彼女のもっとも大切なもの…"大親友"たちと共に過ごした時間を忘れることなく、これからも仕事を続けていくことができたなら、本当に世界そのものを変えてしまう、そんなこともあり得るのかもしれません。人心を掌握する術を全て知り、その闇も悲しさも全て知っている彼女なら。
以上、コラムでした。
公開日:2003年03月10日