魔女界とは気象の異なる人間界で、彼女が一番嫌いな肌寒い雨の日。 魔法堂のドアが開き、今日初めての来客を知らせる。そこには彼女の記憶に 深い楔(くさび)を打ち込むことになる、ひとりの少年の姿が在った。 |
少年)すみませーん! すみませーん! リカ)うるさいね……なんだい子供じゃないか やって来た人物がお金を持っていそうもない子供だったことで、 あからさまに不快そうな顔をするマキハタヤマリカ。 少年)おばちゃんここって”オマジナイ”おいてるんでしょ? まだ幼稚園児くらいの男の子は無邪気な口調で彼女に問いかける リカ)お姉さんじゃ!! 口には気をつけい! 少年)えっとね、えっとね、……… リカの言葉を聴いていないのか、少年は商品棚を見渡す。 リカ)なんじゃ、何が欲しいんじゃ早く言わんか! 客足のかんばしくないことで虫の居所が悪いリカは要領の悪い少年の口ぶりに ますます不機嫌になっていく 少年)うーんとね、えーと リカ)早くせんか! イライラする!! 頭の考えを上手く口にできない男の子に彼女は怒鳴りつける 少年)えっと”悪い”が無くなるオマジナイ、ください リカ)あーー? 悪い?(どうせ成績かそこらじゃろ) ほれ小僧、これでも身に付けておれ。 勝手な解釈をしながら、深緑色の水滴をイメージしたペンダントを 少年に手渡す。 リカ)で、代金じゃが千… 少年)ありがとーおばちゃん!! 金額を口にするよりも早くネックレスを首に下げたまま店から少年は 店から出て行ってしまった。 リカ)ど、泥棒ーー! 万引きじゃー! ララ、ララー!! その叫びを耳にし、一日の大半を睡眠時間に費やしているネコ妖精 ララが二階から顔だけ出して答える。 ララ)嫌よぉーこんな寒い雨の日に外に出たくないし、それに 一番安いペンダントなんでしょ。それくらいで目くじらたてないの リカ)な、な、なにぃーー ところが冷たい雨の続く翌日… 少年)あの、すみません”オマジナイ”を売ってるマキハタヤマさんの お店ってここでいいでしょうか 先日巻き起こった騒ぎの張本人が、少しおどけながら来店する リカ)ノコノコとよく顔が出せたもんじゃな、この盗人がぁ! 少年)すみません、本当にすみませんでした。 リカ)な、何じゃ…?? お前本当に昨日の小僧か? 年齢に似合わない丁寧な口ぶりに、彼女は怒りを忘れ疑問を口にする 少年は俯きながら小声で語りだした 少年)あの、弟を、弟を助けてください! お願いします! リカ)どういうことなんじゃ? 唐突な言葉に驚きながら詳しい説明を求めるリカ 少年)信じてもらえるか分からないんですが、実は… 続く |
公開日:2002年07月24日
第一次修正:2002年08月09日