「Bistro la Salle」。
加賀美のバイト先であり、天道がまかないを食べに通っている洋食店で。
ボウケンジャーと天道たちが、打ち上げのサバ味噌パーティーを開催していた。
もちろん、天道のお土産の、宇宙サバ味噌でだ。
「けど、明石さん。今回は全部、天道に美味しいトコ持ってかれちゃいましたよね」
「……何のことだ?」
サバ味噌を頬張りながら話しかける加賀美に、明石は。
「さくら」
「わかりました。特別ですよ、加賀美さん」
と、プレシャスボックスから取り出されたのは、一本の筆。
「? さくらさん、何ですかコレ?」
「《レインボーブラシ》――私たちが回収した、ハザードレベル429のプレシャスです」
「何だって? じゃあ、あの宝石は……」
「その宝石を生み出したのが、このプレシャスさ」
と、蒼太が解説を始める。
「高名なピクトマンサーが使用した絵筆で、心ある者が振るえばスケッチしたものを実体化する――そう言われててね」
「……え? じゃあ、あのミルロは?? あのミルロが――???」
日本語を喋れてない加賀美に、真墨、菜月が。
「何驚いてんだか。まさか、本気で俺たちが出し抜かれたと思ってたのか?」
「プレシャスの保護が、私たちの任務――そうですよね、さくらさん?」
「そういうことだ。俺たちはサージェスのプロフェッショナルだからな。なぁ、加賀美?」
そうまとめる明石に、加賀美は。
「天の道を往く者に、《不滅の牙》が率いる冒険者。何で今年のヒーローは、こんな無茶苦茶な連中ばっかりなのかね……」
と、ため息をついて。サバ味噌をパクついたのだった。
「で、何でうちに飾るんだよ」
ビストロ・サルの店員にして、天道をもうならせる料理の腕を持つ、日下部ひより。
彼女の抗議に、天道は改めて、額縁に飾られた絵を見つめる。
「なかなかだろう。お前の絵も素晴らしいが――」
あの後。ミルロから贈られた絵。
「こんな幸せな絵も悪くない」
絵の中の、妙に目つきが悪く描かれたミルロは――
FIN