第2話Aパート2


 門矢 士

 黒板の左から右まで全部使って、チョークで大きく自分の名前を書く士。
「今日からお前たちの担任代理になる、門矢つか――」
「……もんやつかさ?」
「か・ど・や・つかさだ!」
 いきなり児童に名前を間違えられる士。まぁ、慣れっこではあるのだが。我ながら説明に困る名前をつけられたものだと、何度となく思ってきた士である。誰がつけた名前かは知らないけど。
「も・や・し?」
「音読みするな! その仇名も何度となく聞いてきたぞ俺は!」
「もやし先生、早くホームルーム始めてくださーい」
「違う! グレート・ティーチャー・カドヤ、略してGTKと呼べ」
「ネタ古っ」
「…………。3年2組ィィィ!」
『もやしせんせーい!!』
「つかさせんせーい!! だろうがそこは!」
 妙にノリのいい児童たちだが、確かにそこには笑顔があった。
(前任者が優秀だったんだろうな。明るくていいクラスじゃないか)
「じゃ、出席を取るぞ」
 その言葉に、私語がすっと消えたのが、その証拠だ。
 アイウエオ順で出席を取っていく門矢先生。が、サ行で詰まった。
「櫻井オンプ……櫻井? 休みか」
「……それは」
 一番後ろ、廊下側から2番目の男子――小松テツヤが口ごもる。ついさっきは、クラスの中心になって先生の名前をからかっていたのにも関わらずだ。
「謹慎処分を受けて、休学中なんです。二人とも」
 と、窓側の空いた二席を指す。
「櫻井と……藤原ハズキのふたりか。何があったんだ?」
「濡れ衣に決まってます! 校則を破って、アルバイトしたって言いがかりを受けて! あの二人に限って、そんなことするはずが……」
 うつむくテツヤ。嘆息し、士は問う。
「ということは、お前の隣の席の矢田マサルは――」
「そいつらのために抗議して、こんな学校にはもう来ないって」
「大体わかった。そしてお前は、その冤罪を晴らしたいと思ってるわけだ」
 テツヤは大きくうなずいた。冤罪の意味がわかってるかは知らないが。
「はい! 産休の佐藤先生も、ずっとあいつらのこと心配してて……」
「そうだな……だが、まずは授業が先だ。1時間目開始だ、教科書を開け」
「先生!」
「安心しろテツヤ。誰一人として、この俺様の授業をサボることなど許さん。昼休みにでも連れ戻しに――」
「いや、そうじゃなくて、出席確認全部終わってません」
 士の端正な顔が、教卓に激突した。



「…………あたしたちも、せつなと一緒に、カオルちゃんの所に行ったほうがよかったのかな」
「そうかも……」
「全然完璧じゃないわ、あたしたち……」
 大きくため息をつくラブ、祈里、美希。
 情報収集といっても、とぼとぼ街を歩くだけで、誰に何を聞いたらいいかさっぱりわからないのであった。
「おっかしいなぁ、いつものパターンだと――」
 ユウスケも首を傾げ、語り出す。
「ここが何々の世界か……とつぶやいてたら、いきなり怪人が襲ってきて、その世界の仮面ライダーが助けに現れて、事情を聞けるはずなんだけど」
「敵の襲撃を期待してどうするんですか。ここはライダーの世界じゃなくて、おジャ魔女の世界なんです。敵なんていませんよ、きっと」
 冷静にツッコむ夏海。
 と――
 今しがた渡ろうとした橋の下から、トランペットの音がした。
 大して上手くはない、子供の出す音。だが、妙に心に響く。
「……ねぇ! 君、ちょっといいかな?」
 その音色に惹かれ、ラブはそのトランペットを吹く少年の元へと降りて行った。追いかける一同をよそに、ラブは尋ねる。 「あたしたち、『おジャ魔女』って子を探してるんだけど」
『直球だァァァ!?!?』
 あまりにもあんまりなラブの問いに、トランペットの少年も流石に顔をしかめた。
「はぁあ!?」
「だから、おジャ魔女。魔法を使う子供たち、って意味でいいのかな?」
「魔法?」
 右眉を動かす少年。その反応に、祈里は脈ありだと悟った。
「もしかして君、何か知ってるの?」
「魔法……っていうか、MAHO堂って店なら、知ってる」
「それだっ!」
 瞳を輝かせ、ラブが少年の肩をつかむ。ちょっと頬を赤らめる少年に気付かぬまま、ラブは語り出す。
「自己紹介が遅れてごめんね。あたし、桃園ラブ。片仮名でラブ!
 あたしたち、その『魔法』について調べてるの。そのMAHO堂ってお店のこと、もっと教えて?」
「あ、ああ……。俺のクラスメートが手伝ってる店だよ。願い事を込めると叶う『かもしれない』、MAHOグッズってのを作って売ってるんだ」
 どうやら当たりらしい。ほっとする一同に、少年は言った。
「俺の名は矢田マサル。『ヤダ』じゃなくて『ヤタ』だ。そのMAHO堂に案内してやるよ、俺常連客なんだ」



「……なるほどねぇ。さながらラブちゃんが、『通りすがりのプリキュア』になるかもしれないってことか」
 イロハ公園の広場にて。カオルちゃんのお店に横付けされたゴールド寿司で、源太に打ち明け話をするせつな。
 追加戦士同士、二人は何かと気が合っていた。特に源太のキュアパッションへの思い入れは尋常ではなく、憧れでもあると言い切っていた。
「けど俺にはそもそも、ディケイドが――士が世界の破壊者、ってのがどうも信じられねぇんだ。丈(たけ)ちゃんの侍の勘で違うっていうのなら、間違いない。
だったら、ラブちゃんも同じさ。安心しな、せっちゃん」
「源太さん……ありがとう」
 素直に頭を下げるせつなに、照れながら源太は頭をかく。が、
「大体『通りすがりの仮面ライダー』ってんなら、もっと悪い奴がいるじゃねぇか」
「そこでどうして、僕のほうを見るのかな? 梅盛くん」
 と、源太が睨むは、海東大樹――ディエンド。カオルちゃんの店のテーブルで、呑気にドーナツをほおばっていた。
「今度は海老折紙でも盗んでほしいのかい?」
「嫌だね! イカちゃんもエビちゃんも絶対渡さねぇからなっ!」
「そうでさぁ親分! おいらも黙っちゃいませんぜ!」
「じゃあダイゴヨウくん、君にターゲットを変えてもいいよ?」
「へっ、冗談じゃねぇや!」
 以前士が、シンケンジャーの世界を訪れた際。海東はこの世界のお宝として源太の烏賊折紙を盗み逃走。そしてディエンドライバーを外道衆に奪われ、シンケンジャーと共闘も出来ず、いいところなしで終わったのだった。
 同じ追加戦士ながら、こちらの二人が犬猿の仲なのも無理はない。
「大体何でお前がせっちゃんに付いてくるんだよ、盗っ人野郎!」
「そこは怪盗と呼んでほしいな。そして僕の旅の行く先は、僕だけが決める。フレッシュプリキュアの世界のお宝を奪うまで、僕はここに居続けるよ」
「お宝?」
 海東はせつなのリンクルンを指した。銃を向けるような仕草で。
「君の持っているピックルンのアカルンがあれば、僕のディエンドライバーはもっと優れた空間移動能力を得られる。だから君に付きまとってるのさ」
「そ、それは……」
 流石に口ごもるせつな。イース時代に失われた命を復活させたのがアカルンなのだから、今リンクルンからアカルンを抜き取られたらせつなはどうなるか、考えたくはない想像である。
「何だってぇ!? せつな姐さんになんてこと言いやがるんでぇ!」
「てめぇ、そんなことしてみろ。百枚おろしじゃ済まねえぞ!?」
「今すぐ、ってわけじゃないさ」
 威嚇するダイゴヨウ、サカナマルを構える源太を、さらっとかわす海東。
「少なくとも世界の分裂・融合云々の事件が片付くまでは、キュアパッションという貴重な戦力を失うわけにもいかないしね」
「わかったわ。盗まれないよう、精一杯頑張るわ」
「そうそう。精々頑張りたまえ、世の中には桃園くんや志葉くんたちみたいに、善人なヒーローばかりじゃないってことを学ぶべきだね、君は」
 偉そうなこと言いやがって……と、面白くなさそうな源太。そんな好敵手の姿に、海東の悪戯心が再び刺激された。
「それに、今の僕は機嫌がいいんだ。アカルンには及ばないけど、カオルちゃんくんのドーナツも大したお宝だよ。誰かさんの普通のお寿司と違ってね」
「おお、そうだろそうだろ。おじさんも有名な怪盗にまで喜んでもらえて嬉しいねぇ。でもお代はきっちり頂くから、グハッ」
「じゃあ領収証貰えるかな? 光写真館……いや、ゴールド寿司宛てで」
 素直に喜ぶカオルちゃん。フレッシュプリキュアの良き相談相手である彼は、彼女たちの正体を知る前から何かと協力してくれた謎の一般人である。
「……ちゃんくん、って何?」
「無理にくん付けすんなよお前。あと普通って言うな」
 せつなの疑問、源太のツッコミはやはりスルーされた。
「そもそも士だって、好きで世界の破壊者になったわけじゃないさ」
 気まぐれ故か、急に真面目に海東が語り始めたからだ。
「かつて運命の切り札をつかみ取ろうと、戦い続けた仮面ライダーがいた。バトルファイトの宿命を打ち砕こうと、彼は最後の最後に自分自身を犠牲にした。世界を救うためにね」
 そして、士も。世界の融合を止めるために、自分の運命を受け入れ――
「でも、僕はそんなのはご免だね。だから東くん、君も自分だけ悪者になるなんてバカなことはやめたまえ。少なくとも、僕が君のお宝を盗むまではね」
「……海東」
「……海東さん」
 さすがに、源太もせつなも口ごもる。
「…………おじさん、難しい話はよくわかんないんだけどさ」
 沈黙を破ったのは、カオルちゃん。
「この世界で、ラブちゃんが一番やりたいことってのは、一体何なのかな」
 その言葉に、せつなは思い返す。

『この世界のおジャ魔女を探して、助けてあげればいいんだよ!』

 そうだ――
 ラブはいつだって、誰かの笑顔を守るために奮闘していた。
 それがどんな相手だろうと。たとえ相手が敵であろうと。
 だからこそ、せつなはせつなになり、ここに生きている。
「……ありがとう、カオルちゃん」
 なら、自分に出来ることは、一つしかないじゃないか。
「私も、ラブのやりたいことを、精一杯助けることにするわ」
「せっちゃん!」
「姐さん!」
「世界の破壊云々はいいのかい?」
 表情を明るくする源太、ダイゴヨウ。こんな時も皮肉を忘れない海東。
「源太さんも、ダイゴヨウもありがとう。それから、海東さんも」
「僕も?」
「ええ。人それぞれ、色々な考えがあっていいと思うわ。そして私の考えは、とにかくラブを助けること。世界云々で悩むのは、それからでも遅くない」
 そして、せつなは立ち上がる。友を助けるために。
「よっしゃ! 俺も手伝うぜ、せっちゃん」
「おいらも一緒でさぁ、姐さん!」
 源太、ダイゴヨウも立ち上がる。彼らもまた、仲間を助けたいのだ。
「…………そうも行かないみたいだよ」
 だが、海東はいつだって自分の道を行く。
『……!?』
 せつなたちも感付いた。世界の裂け目であるオーロラが、屋台のそばの森の中から出現したのだ。
「ディケイド、そしてディエンド。お前たちはこの世界にもあってはならぬ……」
「鳴滝!? どうしてこんなところに」
「預言者」を自称する謎の男、鳴滝。ディケイドは世界の破壊者だと、様々な世界で噂を流す、ディケイドの宿敵である。
 ディケイドを潰すためには手段を選ばず実験を繰り返し、終いには鳴滝にとって敵であるはずのスーパーショッカーにも与した。
 そして彼の持つ能力が、異世界のライダーを呼び出し戦わせること。
 だが――今回は違った。
「薫、ここにもいたわ、プリキュアが」
「ええ。行こう、満」
 灰色の服をまとった、赤と青の髪を持つ少女がふたり。
 その瞳に輝きはなく、ただ暗闇があるのみ。
「霧生満、霧生薫――ダークフォールの刺客か!」
「知ってるのか海東!?」
「……僕の知ってる霧生姉妹とは、ちょっと違うみたいだけどね。少なくとも、味方になってはくれなさそうだ」
 源太の問いに正直に返答する海東。
 ……そして、せつなは彼女たちのことを知らない。まだせつながイースだった頃、横浜みなとみらいでプリキュアが全員集合した際、ラブたち三人は顔を合わせているのだが。
 プリキュアと心を通わせ、遂にはプリキュアに等しい力を得た、ラブたちの知る霧生姉妹。が、その姉妹とは違う世界から来たのが、今彼女たちの目の前にいる霧生姉妹か……あるいはプリキュアに出会う前の、過去の彼女たちか。確かめる術はない。
「ダイゴヨウ! カオルちゃんを頼むぜ!」
「合点でぃ、親分! カオルちゃん兄さん、こっちでさぁ!」
「……だから『ちゃん』だけでいいってばぁ。グハッ」
 非戦闘員――一応は――であるカオルちゃんを逃がすダイゴヨウ。
「さぁ行け、地獄姉妹! 結局プリキュアとして認められなかった恨みを、今ここで晴らすのだ!」
「キュアパッション、あなたはいいわねぇ……」
「私たちは決して、華やかな舞台には上がれない……」
 鳴滝の号令と共に、闇の力をまとって霧生姉妹が襲いかかる。
 そして、残った三人は。
「私のことを知っている!? あなたたち、どこから来たの?」
「地獄からだ」
「あなたも、来なさい」
「よくわかんねぇが、せっちゃんに手出しはさせねぇぜ?」
「僕も、やるしかなさそうだね」
 リンクルン、スシチェンジャー、ディエンドライバー。
 それぞれの変身アイテムを手にし、臨戦体制を取る。
「チェィンジ・プリキュア!」
「スシチェンジャー、一貫献上!」
「変身!」
《KAMENRIDE DIEND》
「ビート・アップ!」



「……おいラブ、一体何だこれは」
「あれー? 一発でバレちゃったよ」
 老婆のような格好をしたラブの丸眼鏡と頭巾をはぎ取り、士は嘆息した。
「だから無茶だって言ったのに」
「私も無理だろうって信じてた」
 奥から、美希と祈里も出てくる。
 ここはMAHO堂。マサルの級友、オンプとハズキが手伝っているお店だ。
 だがそれはアルバイトではないかと疑われ、彼女たちは自宅謹慎となった。故に、アルバイトではなく「オンプの叔母さんの従兄弟のお婆ちゃんの具合が悪く店を手伝っているだけ」だと弁解しようと、作戦を立てたのだ。
 そこにやってきたのが門矢先生。教頭と共に、MAHO堂の主人に話を聞こうとした。
 そこでラブが咄嗟に、美希のブルンの力を借りて変装したのだが……
「何で、あたしってわかったんですかぁ……」
「そんなデカい婆さんがいるか。発育が良すぎるんだ、お前らは。せめて腰を曲げる、椅子に座り切り、風邪のフリとか工夫しろ。わかったか、桃園」
「はーい、門矢先生」
「門矢先生! 人を騙す方法を教えてどうするんですか!」
 と、ここで教頭から、もっともなツッコミが入った。が、士は尚も続ける。
「……いいか桃園、この教頭はこの手の学園ものに実にありがちな頭の固い性格だ。で、こういう場合は概ね校長先生のほうが物分かりがいい。
つまり校長先生に話を通せば良かったんだ。悪手にも程があったな」
「いい加減にしろ士! ラブちゃんたちの気持ちがわからないのか!?」
 たまらず、ユウスケが抗議する。夏海、マサルも一緒だ。
「大体どころか、全くわからないな」
「……士くん! 私、士くんがそんな冷たい人なんて思いませんでした……」
「畜生、お前も教頭の味方かよ」
「夏海、マサル。お前たちは、本当にそれでいいのか?」
 仇名でなく本名で呼ばれ、夏海が顔を上げる。
「櫻井も藤原も、悪いことをしてないなら、胸を張って説明しろ。こそこそ隠れて、口つぐんでスネても、誰もわかっちゃくれないぞ」
 マサルもまた、目を丸くする。
「そういうことが出来ない奴をガキって言うんだ。いつまでそうやってコソコソ逃げ回るつもりだ?」
「門矢先生っ!! 脱線も程々にお願いします!」
 真っ赤な顔をして、実によく居そうな教頭が、実によく言いそうな台詞を続ける。
「人を騙そうとするなんて、そこまでひどい児童だとは思いませんでしたよ! 出てきなさい、櫻井さん、藤原さん!」
「ま、まずいよ美希たん、ブッキー……」
「そもそも君たちも君たちです! 桃園さんと言いましたね、あなたはまだ中学生か高校生でしょう!? こんな平日に何をやってるんですか!? 学校は? 授業は!?」
「そ、創立記念日で休みなんです!」
 それもテンプレな言い訳だな、と士が言う前に。
「櫻井なら、ここにいますけど」
「オンプちゃん! ダメぇ!」
 渦中の人・オンプが姿を現した。ハズキと共に。
 だが、オンプのその衣服に、誰もが目を丸くする。
 紫色のドレス。胸元には8つのボタンがついたタップ。そして――魔女がかぶっていそうな、三角帽。
《おジャ魔女オンプ》――彼女の正体を知る人は、こう呼ぶ。
 その、おジャ魔女姿のオンプは、私服姿のハズキを振り払って。
すぐさま、ポロンを振り上げた。作られたかのような、薄い笑顔のまま。
「プ〜ルルンプルン! ファ〜ミファ〜ミファ〜〜!
 教頭先生、あたしを許して!」
「心を変える魔法はダメぇぇ!」
 ハズキの言葉を飲み込み、光に包まれる教頭。そしてMAHO堂。
 光が戻ると、教頭はなぜか笑顔になり。
「いやいやぁ、櫻井くんは学業と、親戚のお手伝いを立派に両立している感心な児童だと感心しましたよ」
 先程の叱責が嘘のように心変わりした。
「…………え?」
「……そういうことか」
 意味のわからないラブ。何かを納得した士。
「これからもお手伝い、頑張ってくださいね!」
「はーい」
 笑顔でMAHO堂を去って行く教頭。返事するオンプ。
「おい櫻井! いい加減――」
「あ、矢田くんのこと忘れてた」
 そして再びポロンを構える。
「プ〜ルルンプルン! ファ〜ミファ〜ミファ〜〜!
 矢田くんのMAHO堂での記憶よ、消えろ!」
「だからぁ!」
 泣き顔のハズキを意にも介さず、オンプは魔法でマサルの記憶を操作する。
「…………あれ? 俺、こんなとこで何やってたんだっけ」
「ハズキちゃんの作ったMAHOグッズを買いに来たんでしょ?」
 既に私服に戻ったオンプが、マサルに嘘をつく。
「そうだったっけ? あー、でも今金ないから帰るわ。じゃあな藤原」
 こうして、マサルも去って行った。そして残ったのは、ラブたち部外者のみ。これでもう、人の目を気にする必要はない。
「…………どういうことか、説明してもらおうか」
「そうね。世界の破壊者、ディケイド先生」
 涼しげに、オンプは返答した。士の高い背を、事も無げに見上げて。